2011年2月のアーカイブ

第1の長期保有を前提とした株式投資のスタイルが望ましいというのには理由があります。株式市場では、不健全な企業が退場していく代わりに、健全で成長力のある企業が入場してくる、といった新陳代謝が常に行われています。この新陳代謝が株式市場全体の上昇を下支えしているわけです。そのため成長力のある銘柄や特にその国の経済規模が拡大していく過程では、インデックスファンドを長期保有することによって、短・中期では上げ下げがあるものの、長期的にはキャピタルゲインを得る可能性が高くなるのです。「投資」は、企業に「資金」と「時間」を提供し、その企業の成長度合いに応じて利益を得ることだと考えるとよいでしょう。

 

一方、「投機」は機会(タイミング)に対してお金を「投げる」ことであり、勝者のかげには敗者が必ず存在します。短時間で勝敗が決する「投機」では、①豊富な資金量、②情報収集量、③情報分析力、④運、の4つが勝ち残るために必要な条件といえます。機関投資家や投資信託を運用しているファンドマネジャーなどのプロと比較したとき、個人投資家が対抗できるのは4番目の「運」くらいでしょう。これでは、負ける可能性が高いということに気づかざるを得ません。

 

詳しくは

「投機と投資」①

  及び 

「投機と投資」②参照

 

それでは、個人投資家が負けないためには、どうすればいいのでしょうか。私は「時間」を活用するのが最善と考えています。ファンドマネジャーなどのプロは、投資家から常に期間損益を求められ続け、「時価」との勝負を続けなければなりません。一方、個人投資家は価格が「薄価」以上となり、自分で決めた利益が得られるまで待ち続けることが可能であり、最終的なゴールラインを自分で設定でき、ゴールを達成すれば投資をやめることも自由です。つまり、時間を最も自由に管理できるのは個人投資家なのです。それを武器として最大限有効に使おうとすると、時間をかけて企業の成長を待つという株式投資のスタイルこそが、負けにくい資産運用につながりやすいと考えるからです。

 

(4)へ続く

入門講座⑦:個人投資家の資産運用の王道は「負けにくい運用」(2

 

それでは、「残す資金」の運用の手段としての株式投資を考えてみましょう。

資産運用は長期運用を基本とし、

①「投資」と「投機」の違いを知る

②「時間」を最大の武器にする

③「複利効果」を味方にする

3つが個人にとっての王道といえます。

まず「投資」と「投機」の違いを知るためには、株式の売買には、資産形成、資産運用、投機の3つのスタイルがあることを理解していただきたいと思います。自分が行っている、あるいはこれから始めようとしている株式売買がそのうちのどれにあたるのかを認識したうえで、売買判断などの対処法が違うことを知っていないと、株式投資はうまくいかないからです。

 

詳しくは「入門講座②:株式投資の3スタイル」をご覧ください。

 

3通りの株式投資のうち、投資の初心者や50代以上の人には、第1のスタイルである長期保有を前提とした株式投資が最も望ましいスタイルといえます。

 

(3)へ続く

 

今、日本証券業協会からの依頼で、広島エフエム放送のラジオ番組に出ています。放送は26日~327日までの毎週日曜日の朝8時から25分間で全8回、「夢をかなえるマネープラン」というタイトルの番組です。

 

FM放送のリスナーは20代、30代中心の投資未経験者、初心者が大半ということなので、FPらしくライフプランの考え方から始めて、投資の基本を押さえるという内容になっています。

 

もちろん、広島エフエム放送の電波が届く地域にしか放送は流れていないのですが、収録は東京のスタジオで行われています。この写真はそのスタジオの様子を写したもので、私のお相手をしてくれているのは、以前、日経CNBCの生島ヒロシさんの番組で共演したことがある橋浦多美さんというステキな女性キャスターです。

 

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今月の26日に、この番組の公開録音を兼ねたセミナーが広島のリーガロイヤルホテルで開催されます。

第一部として、さわかみファンドで有名な澤上篤人氏のセミナーも予定されていますので、お近くにお住まいで予定が合う方は是非おいで下さい。私と橋浦さんが話す第二部のテーマは、「ポートフォリオの作成方法と投資信託の活用方法(「良いファンド」「良くないファンド」の選び方)」です。投信を持っている方、これから買おうと思っている方には、「聞いてよかった」と思って頂ける内容だと思います。

 

セミナー参加のお申込み方法などは、このホームページのセミナー・研修のご案内の中の「日本証券業協会主催 証券知識普及セミナー」を参照して頂ければと思います。

 

入門講座⑥:個人投資家の資産運用の王道は「負けにくい運用」(1

 

退職金の運用についてのご相談が増えています。個人投資家のまとまった資金の運用方法について、何回かに分けてお話ししてみたいと思います。

 

私は、ファイナンシャルプランナーとして、多くの顧客から相談を受けていますが、50代以上のクライアントのほとんどが、金額の多寡に関わらず資産運用を考えています。ただその多くは、今ある資産を「増やすため」や「儲けるため」というよりも、しっかり管理しながら行う「失わないため」「守るため」の手段としての資産運用を望んでいます。それはアグレッシブな投資によって損失が発生しても、20代~30代であれば挽回するチャンスが何度か訪れる可能性が高いのが、50代以上はそれが難しくなるからだと考えられます。

 

実は、リタイア後に公的年金など以外に定期的な収入を見込みにくい団塊世代やすでに定年退職している世代にとっての一番の経済的なダメージは、インフレによって預貯金(退職金を含む)などの現金の価値が目減りすることといえます。それに備えるためにも、資金の一部で株式投資などによる資産運用を行っておくことが必須なのです。しかし、株式投資などリスクのある運用では、失敗すると大きく資産を減らしてしまうこともありえます。

 

それでは、いまある資産を減らさないためにはどんな運用方法がふさわしいのでしょうか。資産を減らさないために必要なのは、高度な投資手法を覚えて、高いパフォーマンスを追求することではありません。一番重要なのは「負けにくい資産運用」の方法を身につけることだといえるでしょう。

 

(2)へ続く

 

今日、経済評論家の三原淳雄さんが亡くなられました。三原さんには、私が日興證券に入社した頃からですから、20年以上にわたり、いろいろご指導を頂いて来ました。あまり知られていませんが、日本にFPを初めて紹介したのは三原さんでした。米国のニュービジネスについて書かれた著書の中で、日本においても有望なニュービジネスとしてFP(ファイナンシャル・プランナー)という職業を採り上げられたのです。

 

私は、FP的な営業を日興證券が取り入れるプロジェクトのリーダーになるために入社しましたので、米国のFPビジネスの状況をうかがうべく、三原さんの事務所を訪ねました。三原さんご自身が日興證券のOBだったということもあり、当時まだ若輩者であった私に対して、親切に長時間かけて、いろいろなお話をしてくださったことをよく覚えています。三原さんはその後もお会いするたびに、「自分がFPになる気はないけれども、FPの応援団として頑張る。日本人が投資にキチンと取り組めるようになるためにも、FPはとても重要な存在だからだ」とおっしゃっていました。

 

私が12年間勤めた日興證券を退職し、独立系のFPとして会社を立ち上げようとしていた1999年の1月に、新年のご挨拶を兼ねて三原さんの事務所を訪ねました。「今年は一歩、前に踏み出してみようと思います」と言った私に対して、三原さんは「『CHANGE is CHANCE』だ、頑張れ。できる限り応援するよ」と応えて下さいました。「日本は今が変革期、つまりCHANGEが進行している。『CHANGE』と『CHANCE』という単語をたてに並べて比べてごらん。『G』と『C』が違うだけだろう。『G』の中の小さな『』を取ってしまえば、CHANGEがCHANCEに変わる。この小さな『』は『taboo(タブー)』、『timidity(臆病さ)』の『』なんだよ。一歩踏み出すには、今はいいタイミングだ」と説明して下さったのです。以来、「CHANGE is CHANCE」という言葉は私にとっての座右の銘になりました。三原さんは、独立したばかりの私たちに、出版社からの仕事も紹介して下さいました。

 

一昨年、弊社は創業十周年を迎えることができました。今思えば、独立のタイミングも良かったのだと思います。三原さんの「見立て」は正しかったわけです。十周年の記念として、お世話になった方々や弊社のお客様をお招きし、ささやかなパーティーを開催しました。本当にたくさんの方々のお蔭で十周年を迎えることができ、著名な方々にも数多くご出席頂いたのですが、乾杯前の最初の祝辞は三原さんにお願いしました。スピーチをお願いした時に、「もう10年たったのか、よく頑張った。そうか、俺が最初か」と嬉しそうにおっしゃって下さった様子が印象に残っています。

 

残念ながら、まだ「FPビジネス」が日本に定着したと言える状況にはありません。しかし、あちこちにFPビジネスの芽は芽生え始めています。私たちが三原さんの遺志を引き継ぎ、「日本人が投資にキチンと取り組めるようになる」一助となっていきたいと思っています。 

永い間、お世話になり、本当にありがとうございました。心からご冥福をお祈り申し上げます。

入門講座⑤:何故分散投資を行うべきなのか?

(アインシュタイン曰く「複利は20世紀最大の発見である」)

 

前回はなぜ長期投資を中心に考えるべきなのかについてお話ししましたが、今日はなぜ分散投資を行うべきなのかについてお話ししたいと思います。当社は510年以上の運用期間で考える「資産形成」や「ファミリープロテクション(資産防衛)」のための株式投資をご提案することが多いのですが、その場合でも株式だけに集中的に投資することは、決してお薦めしません。それは、株式投資だけでは長期的な資産形成でどうしても味方につけたい「複利効果」を充分に活かしきれないからです。

 

たとえば、1000万円の運用を考えてみましょう。Aさんは1年目+10%、2年目+20%、3年目-20%、4年目+10%という運用成果だったとします。4年間の年平均騰落率は(10202010)÷45%です。一方、Bさんは1年目+6%、2年目+8%、3年目-2%、4年目+6%だったとします。Bさんの年平均騰落率は(68-2+6)÷44.5%になり、Aさんの方が上回っています。

入門講座⑤.JPG 

また、AさんとBさんの各年の運用成績を比較しても、一見「3勝1敗でAさんの勝ち」というようにも思えます。しかし、一覧表の最後を見るとわかるように、4年後の元利合計額は、Aさん1161.6万円に対してBさん1189.2万円と、Bさんが30万円近くも多くなっており、圧勝なのです。これはAさんが3年目(-20%)に複利効果を敵に回してしまったのが原因です。実は複利は両刀の剣的な性格を持っています。運用がプラスならばそのプラスをさらに増やしてくれる力強い味方となるのですが、逆にマイナスだとそのマイナスを拡大させる方向に働いてしまうのです。

 

複利効果を味方につけるためには、Aさんのような「勝ったり負けたり」を繰り返す運用ではなく、Bさんように地味に見えても「負けにくい」運用を心がけるべきなのです。株式投資だけでは、どうしてもAさんスタイルの運用になってしまいがちです。長期運用では「カメはウサギに勝つ」ということを覚えておきましょう。そして、いかに負けにくくするか(=ダウンサイドリスクを小さくするか)を実現する方法が「分散投資」なのです。

 

昔話でカメがウサギに勝った理由は、「ウサギはカメを見て走ったり休んだりしたが、カメはゴールを見て走り続けたから」でしょう。ライフプランを実現するというゴールを目ざして行う運用では、まさに「カメスタイル」が正解といえるのです。