前回、「仕事としての運用」は国際分散投資が基本であり、世界経済の成長が不可欠という話をしました。もしも、あなたが世界経済全体は将来に向けてシュリンクしていく、と考えるのであれば運用はやめるべきでしょう。
しかし、いずれはダメージを乗り越え、経済は再度成長していくはずだと考えるのであれば、ここで投資をやめるというのは間違いです。ただし、当面の間は成長が鈍化し、かつ市場のボラティリティが高い状況が続きそうです。こうした投資環境下では、どのように投資・運用を行っていけばいいのでしょうか。
◎ポートフォリオ構築中であれば投資の継続を
マーケットが大きく下落するような局面では、積立方式で投資を行い、ポートフォリオを構築しつつある人の中にも、売りたくなったり、積立をやめたくなったりする人が少なくないと思います。しかし、定額で行う積立投資は、価格が高い時には少ししか買えず、低い時にはたくさん買えるという、とても合理的な投資方法で、価格の変動幅が大きい投資対象ほど平均取得単価を引き下げる効果を期待できます。ひるまずに積立投資を継続すべきです。
◎ポートフォリオ構築済みであれば配分比率や商品の見直しを
すでにポートフォリオを構築済みで、ある程度まとまった金額で運用している人は、資産配分を見直すといいでしょう。今後しばらくは経済成長率の低迷が予想されること、また、過剰流動性相場の中、多くのマーケットでボラティリティが高めの時期が続く可能性が高いことなどを考慮し、ボラティリティが大きい株式の比率を下げることで、しばらくの間はポートフォリオ全体のリスクの低減を図るべきでしょう。
また、コロナ禍により観光や宿泊関連を筆頭に多くの業種がダメージを受けている一方で、リモートワークなど新たなワークスタイルの広がりにより、IT関連などを中心に、さらに成長が期待できそうな業種も出てきています。これまで高い成長率が期待できた新興国経済も、コロナ感染の状況や、米中関係の悪化による影響などが国により大きく異なるため、従来のようにひとくくりにして投資を行っていいのかを再考する必要が出てきています。インデックスファンドを中心にマーケット全体への投資を行ってきた人の場合、コロナ禍の影響を予測しながら、一部を有望な国や産業への投資へ切り替えることも必要でしょう。
◎これまで以上に資産運用が難しい時代に
コロナ禍の先行きはまだまだ不透明であり、米中関係の先行きなども含めて不確実性が高まれば高まるほど、ポートフォリオのリスクコントロールは難しくなります。さらに、アセットクラス間の相関関係が以前とは異なってきていることもリスクコントロールを難しくしています。現在は世界的な低金利下の過剰流動性相場で、投資可能な資金がジャブジャブの状態です。その資金が流れ込んだアセットクラスでは価格の上昇が発生していますが、逆に一斉に引き揚げられれば価格の大幅な下落につながるでしょう。以前異なる値動きを見せていたアセットクラスを組み合わせることだけでは、リスクのコントロール(ブレの抑制)が行いにくくなってきています。したがって、当面の対策としては、より多くの投資対象に分散投資を行う、あるいは、ポートフォリオのキャッシュ・ポジションをある程度高めに保つといった対応を考えるべきでしょう。
今年2月、北イタリアでの新型コロナウイルスの感染者急増をきっかけに、世界的に株価が暴落しました。今回の株価暴落は、私がこれまで経験した暴落とは全く性質が違うものといえるでしょう。従来の株価暴落というのは、リーマンショックなどもそうだったように、マーケットの中に何らかの原因があり、それによって引き起こされたものでした。
そうした暴落は、それなりに多くの人が経験してきたわけですが、今回のパンデミックによるこれほどの株価下落というのは誰も経験がありませんでした。コロナ問題の広がりや終息について先が読めないということもあり、驚きが恐怖に変わりながら暴落も世界中に広がっていきました。
経済を下支えしようと各国が行った大型の経済政策や金融緩和策により、株価は持ち直しつつありますが、これはかつてない規模の資金余剰状態を作り出し、その結果、行き場のないお金が債券と比べれば株式の方がまし、というような形で動いている状況といえるでしょう。コロナ禍自体はまだ全く終息のめどが立っていないわけで、いったん持ち直したとはいえ、マーケットの先行きが不透明な状況であることに変わりはありません。
◎個人の投資・運用への影響
こうしたマーケットの状況は、当然、個人の資産運用や投資にも影響を及ぼしますが、その影響は投資・運用のスタイルにより異なってきます。
以前もお話ししましたが、個人が行う投資や運用には、主に2つのスタイルが考えられます。一つのスタイルは、自分の相場観で、面白い、儲けたいと思って行う投資、いわば「趣味としての投資」。そしてもう一つのスタイルは、自分が頑張って働くのと同時に、ある程度はお金にも働いてもらいたいと思い行う、「仕事としての運用」です。
「趣味としての投資」を行っている人の中には、ボラティリティが高まった2月以降のマーケットの状況を、儲けるチャンスと捉えている人も少なくないでしょう。たとえ失敗して損を出しても、それを趣味にかかったコストとして支払っても仕方ないと考えられるのであれば、問題ないと思います。
一方、投資自体にはそれほど関心はないが、老後資金などへの不安もあり、お金にも働いてもらいたいという「仕事としての運用」を行っている人にとっては、今回のコロナ問題は迷惑以外の何物でもないはずです。
なぜなら、「仕事としての運用」の基本は長期国際分散投資であり、そのリターンの源泉は世界経済の成長だからです。ところが国際機関などの成長率予測を見ると、コロナショックにより今後しばらく、世界の経済成長は期待できないどころか、マイナスになることが予想されています。
そういった低成長時代にも「仕事としての運用」を継続すべきなのか、継続する場合には具体的にどう運用していけばいいか。これらの点については、次回お話ししたいと思います。
2011年4月1日付けの本ブログでも書いたのですが、生島さんがご自身でFPの資格を取得された後に、セミナーで共演させて頂いてから始まったお付き合いは、10年以上になっています。現在は、生島さんご本人以外にも浅野温子さんや優木まおみさんなど60人以上が所属する中堅プロダクションとしてのポジションを確立されておられますが、私と出会った頃は、まだ優木さんがブレイクする前で、生島さんが一人で事務所を荷っているという状況だったことを覚えています。
弊社のお客様として資産運用のアドバイスを行ったり、生島さんのラジオやテレビの番組に出演させて頂いたりして参りましたが、長男がプライベートで生島さんにお世話になったこともあり、当日は長男と2人でお祝いに伺いました。
会場にはテレビ局やラジオ局などメディア関係の方を中心に、芸能界やスポーツ界、政界、財界関係の方々1,000人以上がおいでになっていて、広い会場は参加者で一杯でした。
司会は徳光和夫さん親子で、パーティーの代表発起人である菅官房長官もお忙しい中来場され、ご挨拶をされていました。たくさんの人に愛される生島さんの温かい人柄が伝わってくる、とてもいい会でした。
このうちFPの行う運用アドバイスは「仕事としての運用」についてのものが一般的です。ただし、日本人の10人に1~2人は「趣味としての投資」を行っていて、この場合はブル・ベア型の投信などを活用した短期売買スタイルを除けば、投資信託よりも個別株式への投資を好む人が多いと思われます。
そういうお客様に対して、投資に成功する確率を上げるためのアドバイスを行うこともあります。
今回は、個別株を中心に「趣味としての投資」を行いたいという人であれば、知っておくべき株式市場の循環性についてお話ししたいと思います。
株式市場は金利動向と企業実績の両者の影響を受けながら、「金融相場→業績相場→逆金融相場→逆業績相場」という循環を繰り返しています。
この中で株価が上がりやすい時期は金融相場と業績相場であり、逆に下落しやすい時期は逆金融相場と逆業績相場になります。
今がその循環のどの辺りに当たるのかを考えながら、「もうかりやすい時期にもうける」というのが、趣味の株式投資を行う際の基本スタンスと言えるでしょう。
今がどの局面に当たるのかを考える上で大きなヒントになるのが、経済関係のニュースなのですが、それぞれの局面でどんなニュースが流れるかを一覧表にしてみました。参考にして頂ければと思います。
]]>人口減少が始まり、低成長で勤労所得が増えにくくなったわが国では、資産形成や資産運用の重要性が高まり、金融庁の行政運営の方向性が大きく変わったこともあって、独立系FPにとってのビジネスチャンスがたいへん大きくなってきています。
実は、ビジネスチャンスといっても、個々の独立系FPが実際に行っているビジネスの内容はたいへん多岐にわたります。
もちろん生活者である個人向けの相談業務が一般的ですが、他にも講師業務や執筆業務、金融商品の販売業務、金融機関など向けのツール作成や個別相談などのアウトソーシング業務、財団や学校法人向けの運用アドバイス業務、事業法人の役社員や組合の構成員向けの相談業務などがあり、FPごとにメインとしている業務の内容は異なっています。
中には、まったく相談業務を行わない、講師業務・執筆業務専業の独立系FPも存在します。
また、一口に講師業務といっても、金融機関や証券会社・保険会社などの従業員向けの研修の講師(プロに教えるプロとしての業務)、金融機関などが主催する商品販売を目的とする一般生活者向けセミナーの講師、企業の従業員を対象とする確定拠出年金やリタイアメントセミナーの講師、公的団体(金融庁や日銀、証券業協会、投信協会など)主催の教育・啓蒙目的のセミナー講師、FP資格取得のための研修講師など、さまざまな分野があり、どの分野をメインとするかで、当然ながらマーケティングの方法や必要とされるスキルが異なってきます。
弊社のFP会社としての最大の特徴は、子会社の業務を合わせると、上に掲げたすべての業務を実際に全国で行っている点にあります。
十数年前に、弊社を訪れた米国を代表する独立系FPの一人が、当時米国で成立していたFPビジネスのほとんどに弊社がすでにトライしていることに驚き、そんなに業務範囲の広いFP会社は米国にも存在していないという話をしてくれたことを覚えています。
昨年9月、一緒に会社を立ち上げた福田さんが、ご家庭の事情で仕事を離れ、家事に専念することになりました。気づけば私自身も60歳代となり、大きな入れ替わりなくやって来た弊社役社員の高齢化も進んで来ています。
今回、せっかく成長期を迎えようとしているわが国のFPビジネスの次世代のリーダーとなり得る人材を育てるのと同時に、弊社自体の世代交替にもつながればと考え、弟子を募集してみることにしました。リーダーに最も必要なのは、ビジネスチャンスを見つけ、それを具体的な形にする力だと思っています。
弟子として一緒に働くことで、私のモノの見方や考え方、アイデアを形にするまでのプロセス、マーケティング手法などを身につけ、次世代のFPビジネスのリーダーを真剣に目指そうという方からのご応募をお待ちしています。
長期的にお金にも少しは働いてもらおうという「仕事としての運用」を行うためには、まず「長期」、「分散」、「積立」が何故重要なのかということをしっかり理解しておく必要があり、「趣味としての投資」との違いを認識した上で商品選択を行わねばなりません。
私はそれらについての考え方を総称して、「相場観」に対する言葉として「投資観」と呼んでいます。
■なぜ長期投資なのか
長期投資を行うべき最大の理由は、投資対象の成長には、ある程度の時間が必要だからです。
短期の売買では、利益を得る人の裏側には、損失を被る人がいるという、ゼロサム(誰かの儲けは、売った人が儲けそこなった分で、合計するとプラス・マイナス・ゼロになる)ゲームでの勝者を目指そうとする投機的な行為になりがちです。
しかし、長期的に成長し、価値が増していく企業などに投資を行えば、ある程度時間はかかるでしょうが、その企業の株主全員が利益を得ることができます。
これは企業の成長によって、投資している対象の価値がプラスサム(合計がプラス)になるからです。
投資の本質は成長にあり、成長する可能性が高いものに資金を投じてプラスサムになるのを待つ長期投資スタイルこそが、情報量や資金量ではプロにかなわない立場で、資産形成を目指す個人投資家にとって王道と言われる理由なのです。
(詳しくは入門講座の④をご参照下さい。)
■なぜ分散投資なのか
長期投資を行う場合に重要となるのが「複利効果」です。
運用期間が長くなるほど、複利の効果は高まります。
この複利効果を味方につける際にポイントになるのが、価格のブレ(リスク)の大きさです。
ブレの大きな運用では値下がり時に複利効果がマイナス側に働いてしまい、せっかく積み上げてきた資産を大きく減らしてしまうことにもなりかねません。
マーケットの状況に応じて儲かりそうなものを見つけようとすること以上に、値下がりに備えるためにできるだけブレを抑えた運用を心がけるべきなのです。
リスク・テイクを行う趣味の投資では、儲かりそうもないものに投資するなどということは考えもしないでしょうが、ブレを抑える(=リスクをコントロールする)ためには、儲かりそうなものだけでなく、あえて儲かりそうもないものを組み合わせたり、値動きの異なる複数の投資対象に分散して投資を行うことが最も重要なポイントになります。
それが分散投資を行うべき理由なのです。
(詳しくは入門講座⑤をご参照下さい。)
■なぜ積立投資なのか
いくら分散して長期的に運用を行うとしても、価格が高い時期にまとめて購入してしまうと、その後の値下がりを挽回するのに時間がかかってしまい、運用の成果も期待しにくくなります。
値上がりしそうなものを当てに行こうとする「趣味としての投資」であれば、安くなるのを待ってまとめ買いすることを考えるのでしょうが、いつが高いか安いかの判断や将来の価格の動きを予測することはプロでも難しいので、購入する時期を分けることが高値掴みを避けて、そこそこの運用リターンを目ざす「仕事としての運用」では、シンプルでありながらたいへん有効な方法になります。
また、投資を行った後に価格が下落を始めるとどうしても暗い気分になりがちですが、定時・定額買付け方式の積立投資であれば、価格が下がるとたくさん買えることになります。
その後に投資対象の成長に伴って価格が上昇を始めると、比較的早いうちから利益が出始めるのが積立投資の特徴といえます。
(詳しくはNISAの活用法(1)をご参照下さい。)
つまり、価格の下落時にはたくさん買えていると考えればいいわけで、値下がりに対する心理的なストレスをあまり強く感じなくてすむはずです。
運用に不慣れな投資の初心者にとっても始めやすい投資方法といえ、実は、定額買付けのスタイルは「仕事としての運用」にマッチしていると言えるのです。
それは投資という言葉を聞いた時に、ある程度のリスク(投資の世界では値動きのこと)は覚悟の上で大きな利益を上げようという、投資スタイルを思い浮かべてしまう人が多いからでしょう。
そこで今回は、投資にはもともと2種類のスタイルがあり、そのいずれかによって全く異なる行動をとる必要があるということを確認しておきたいと思います。
証券会社やメディアからの情報や自分の相場観などを頼りに、値段を見ながら興味のある個別銘柄などに対して中期または長期スタンスで投資を行い、値上がりを楽しみに待つ投資スタイルを、私は「趣味としての投資」と呼んでいます。
この投資スタイルは、もともと趣味は楽しむものですから、それを面白いと感じ、ワクワクする人が行うのが一般的で、うまくいけば利益を得られますが、仮に損失を出したり、最悪ゼロになったとしても、趣味なので仕方ない、次回頑張ろうと諦めるしかないでしょう。
本来、趣味は旅行にしてもゴルフにしてお金を払って行うものが一般的だからです。
日本人で投資に興味を持っている人は、10人中1人か2人といった割合だと言われています。
一方、投資には、地道にお金に働いてもらいたい人が行う「仕事としての運用」とでもいうべき、もう一つのスタイルがあります。
こちらは投資を面白いとは感じない人でも、少なくともやり方だけは知っておくべきだと思うのですが、そんなスタイルがあるということを知らない人がほとんどで、実際に実行できているのはごく一握りの人たちだけというのが実状です。
具体的には、将来的に成長が期待できそうな投資対象に分散して長期投資を行うことで、途中で大きくマイナスにならないようにリスクをコントロールしながら資産形成を目指そうとするものです。
趣味ではなく仕事なので、将来のライフプランなどをもとに商品の組み合わせなどを考えてスタートしてしまえば、その後はあまりワクワクするようなことではなく、むしろ退屈で面白みのない運用ともいえるでしょう。
この仕事としての運用を行う人に求められるものは相場観や売買タイミングの判断ではなく、お金にしっかりと働いてもらうための「投資観」(後述)といえます。
私たちFPがお勧めし、アドバイスする投資は、この「仕事としての運用」の部分が中心となります。
お客様の立場からすれば、退屈で面倒な運用だからこそ、ある程度費用はかかってもプロである我々に任せる意味があるということにもなるでしょう。
ファンド・ラップでかかる年2%程度の手数料も、この面倒な管理や状況の報告にかかるコストといえます。
ファンド・ラップに1000万円投資すればファンドの信託報酬以外に毎年20万円程度を支払うことになります。
これらのコスト水準と比べれば、現状、弊社の場合には定額でFP顧問料として年間10万円(税抜)、またはFP会員の会費として年間3万円(税抜)を頂いていますが、安いと感じて頂ける場合も多いようです。
「趣味としての投資」と「仕事としての運用」の違い
前回、金融庁さんを中心に日本人の金融リテラシー向上のためのプロジェクトが始動しそうだという話をさせて頂きましたが、「リテラシー」という言葉は「知識+実行力」を意味しています。
「長期・分散・積立」を基本とした投資の実行力を身につけてもらうための具体的な仕組みとして、国は来年から始まる予定の積立NISAと対象者を拡大したiDeCoを用意したということでしょう。
私なりに日本人の金融リテラシー向上に寄与できるようなことを、ということで3月23日に「女性のための個人型確定拠出年金の入り方」というマンガ本(詳しくはこちら)をKADOKAWAさんから出しました。
昨年出した「気づいたら貧困層!?」と同様に、マンガ家の小久ヒロさんとのコンビで作ったのですが、前回は教育・啓蒙関係の内容が中心だったのと比べて、今回は実務本として行動につなげるための内容を重視しました。
iDeCoの申込書の書き方や口座を開設する金融機関の選び方、具体的な商品の選び方まで書いてあり、これ1冊読めば、ほとんどの人はiDeCoをすぐに始められるはずです。
iDeCoに少しでも関心がある方には、是非読んでいただきたいと思っています。
マンガの一部は、今後りそな銀行さんや三菱UFJ信託銀行さんのホームページなどでも紹介される予定になっています。
また、この本の出版を記念してということではないのですが、サンケイリビング新聞社主催の、iDeCoセミナーで講師を務めました。
iDeCoという愛称の選定委員だった元プロ・テニスプレーヤーの杉山愛さんと一緒に京王プラザホテルで、女性中心に約200名の参加者に向けた講演をさせて頂きました。
iDeCoに関心がある方が来場していたためか、皆さん真剣にメモを取る姿が見られましたが、「今日はいい話を聞いた」で終わらずに、是非、投資の第一歩をiDeCoで踏み出してもらえたら、と思います。
金融庁さん主催の会議には金融経済教育関連のものを中心に、これまでも何回か委員として関わって来ており、昨年も金融審議会市場ワーキング・グループ(WG)の委員としてフィデューシャリー・デューティーについての議論に参加しました。
そんなこともあってか、最近は金融庁さんのいろいろな部門からのお問い合わせやヒアリングが増えて来ていたのですが、今回の会議では、いよいよ生活者向けの金融経済教育が国のプロジェクトとして、本格的に始動しそうな気配を感じました。
2月3日の会議には、越智金融担当副大臣や森金融庁長官も出席され、日本の個人金融資産の過半を預貯金が占める現状の背景や「長期・積立・分散投資」を促進していくことで、有価証券投資の部分を増やし、そのポートフォリオをバランスのとれたものにしていくための方法、さらに実践的な投資教育や情報提供についての議論がスタートしました。
詳しい内容をお知りになりたい方向けには、金融庁のホームページで、いずれ議事録が公開される予定です。
独立系FPである私が、国家的なプロジェクトの方向性を議論することになるかもしれない会議に、たった6人しかいない委員の一人として参加していること自体が示しているような気もしますが、会議全体を通じて、金融経済教育だけでなく、投資型商品のアドバイスや販売の荷い手としての独立系FPへの期待の大きさが感じられました。
欧米スタイルの独立系FPのビジネスモデルの確立に向けて、追い風が吹き始めようとしているようです。気を引き締め、弊社のグループ・メンバーと共に、投資運用アドバイスを中心として、さらなるスキルアップを図って行きたいと思っています。
■贈与資金の受け皿として活用
■贈与と組み合わせて活用したい
2015年1月以降、相続税の基礎控除額(非課税枠)が以前の「5000万円+1000万円×相続人の数」から、「3000万円+600万円×相続人の数」に引き下げられました。
以前なら課税対象ではなかった人も、相続税を支払う可能性が出てきています。
そこで、生きているうちに子供や孫に少しずつ資産を贈与し、相続時の財産を減らしておこうと考える人も増えているようです。
資金を贈る側、受取る側を合わせれば、あらゆる世代に考えられる活用法ともいえるでしょう。
一般的な贈与の場合、基礎控除(毎年110万円)の範囲内であれば贈与税がかかりません。
仮に、2人の子供に毎年100万円ずつを5年間贈与し、その資金がNISA口座で運用されていけば、合計で1000万円の資金を非課税で移転でき、運用益にも税金がかからずに済むわけです(ただし、実際に行う場合には、まとまった資金の贈与と認定されないように、毎年の贈与金額を少しずつ変更するなどの工夫が必要になるかもしれません)。
子供や孫の世代では、資産形成を目的とした積立て形式での長期運用が最も効果的と考えられ、この場合には複利効果を高めるためにも、できるだけ分配金を出さないタイプのファンドで、将来の成長が期待できる投資対象に投資を行うタイプのものが有力な候補になるでしょう。
■インフレ等に備える「残す資金」の運用口座として活用
リタイア後の家計にとって、最大の敵は「インフレ」といえるでしょう。
現役世代ならば、物価の上昇に合わせて給料もある程度上がることが期待できるでしょうが、公的年金の支給額は増えにくい仕組みになっている上に、保有している資産の価値が物価の上昇と共に低下していくことになるからです。
そこで、将来のインフレへの対策として、特に使用する予定のない余裕資金(残す資金)の一部で、物価上昇時に価格が上昇する傾向のある金融商品をNISA口座で毎年120万円分ずつ購入し、将来のインフレに備える保険的な位置付けで保有し続けるという方法が考えられます。
長期的にはインフレ抵抗力があるといわれる代表的な金融商品に株式がありますが、個別銘柄の株式はどうしても値動きが大きくなりがちなこともあり、投資するのに躊躇してしまう人も少なくないでしょう。
インフレ対策としての運用の目的は、資産を大きく増やすことではなく、あくまでも保有資産の価値を保全することですから、リタイア世代やプレリタイア世代では、複数銘柄の株式をある程度組み入れたバランス型のファンドや、インフレ時の通貨価値の下落に備えられる外貨建ての債券やREITで運用されるファンドなどが有力な選択肢になるでしょう。
幸いにしてインフレが発生しなければ、もともと「残す資金」の一部のはずなので、そのまま次世代に継承してもらえばいいと思います。
なお、長期間の運用を行う場合には複利運用が効率的といえるため、できれば分配金を出さないタイプのファンドで、ロールオーバーしながら10年以上運用を継続すれば、インフレに対する保険としての効果をより期待できるでしょう。
■「ゆとり資金(受取りたい資金)」の個人年金商品での活用
毎月の生活費の不足分やお小遣いを貯蓄から取り崩している、という人も少なくないようです。
そんな人には、NISA口座で分配型のファンドを購入し、運用しながら毎月分配金を受取っていく、という活用法が考えられます。
NISA口座でファンドを購入すれば、本来受取る分配金にかかる20.315%の税金は一切かかりません。
特に定期的な分配金を個人年金代わりにしたいという、リタイア後の世代のニーズに対応する活用法といえるでしょう。
ご夫婦お2人で毎年120万円ずつ分配型のファンドを購入していけば、最大で投資元本1200万円分のファンドから、非課税で分配金を受取ることができるわけです。
例えば、NISA口座で分配型ファンドを120万円分購入し、毎月5000円の分配金(普通分配金のみ)を受取る場合、分配金がずっと変わらないとすれば、非課税期間の5年間の合計で、6万円強の税金を払わずに済みます。
お2人で5年間継続して毎年120万円分ずつ購入していけば、そのメリットは大きくなります。
ただし、注意したい点があります。
投資家が受取る分配金には、税金がかかる「普通分配金」と、税金がかからない「特別分配金」の2種類があります。
税金がかからない分配金とはどういうものでしょう。
投信は値動きのある商品で運用するため、投資対象の価格が下がり、信託財産(投資家から集めたお金)の評価額が小さくなっている(=基準価額が下がっている)ときに分配金を払い出すと、購入時の基準価額(個別元本)によっては、当初の投資資金の一部が払い戻されるということが起こります。
この部分が特別分配金、または元本払戻金と呼ばれるものです。
自分が出したお金が戻ってくるだけなので、収益とはみなされず、税金はかかりません。
そのため特別分配金には元々税金はかからず、非課税のメリットを活かすことができません。
値動きの大きめな商品は、安定的に高額の普通分配金を払い出すことが難しいと考えられるため、毎月必要とする分配金の金額にもよりますが、一般的にはNISA口座で毎月分配型のファンドを購入する場合には、値動きが小さめの、普通分配金を中心に払い出すタイプのものを選ぶ方が無難といえるでしょう。
■老後資金として「残す資金」の運用口座として活用
50歳代で、ある程度まとまった資金を保有している場合、リタイアに向けてその資金を増やす目的で、NISA口座を活用することが考えられます。
収益性が高い運用商品の代表は株式でしょうが、収益性が高い分、リスク(ブレ幅)も大きくなります。
ある程度まとまったお金の長期的な運用では、できるだけブレを抑えた運用の方が効率的といえます(入門講座⑤:「何故分散投資を行うべきなのか?」ご参照)。
そこで、株式とは値動きの異なる債券やREITなども組み入れた、ポートフォリオ運用を行っていく方がいいでしょう。
値動きが異なるアセットクラスのファンドを組み合わせて保有する方法のほか、それらをあらかじめ組み合わせてあるバランス型ファンドを購入する方法もあります。
バランス型ファンドはファンド内でリバランスが行われるため、売却した分の非課税枠の再利用ができず、リバランスを実行しにくいNISA口座で長期間のポートフォリオ運用を行うのには、適したタイプのファンドといえるでしょう。
バランス型ファンドには、国内の株式や債券だけで運用を行うもの、海外の株式や債券、さらにREIT等を組み入れているもの、株式の比率が高いもの、債券の比率が高いもの、また組み合わせる比率を変更するもの、変更しないものなど、さまざまなタイプのものがあります。
具体的な商品選択では、自分がどれくらいのリスク(ブレ幅)なら耐えられるか(リスク許容度)、どの程度の収益率を目標とするか(目標収益率)などの他、シャープレシオなどの指標を用いて運用効率が高いと考えられるファンドを選択することが重要でしょう。
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新年、明けましておめでとうございます。
金融庁や金融広報中央委員会(日本銀行)が主導する金融経済教育に関わり出してから10年近くがたちますが、弊社のお客さまはもちろんのこと、日本人全体にとって少しでも役に立つようなライフワークとして、今後も金融リテラシーの普及に協力して行きたいと思っています。
今月22日に、20歳~30歳台の方向けに、金融リテラシー向上のため、特に投資の必要性やNISAの活用方法について、マンガで解説した本がKADOKAWAから発刊される予定です。
「気づいたら貧困層!?~お金を武器に!月々3万円から2000万円をつくる方法教えます~」という本で、タイトルは少々刺激的かもしれませんが、なぜ生活者、中でも若年層にとって投資が必要になるのかをロジカルに、かつ分かりやすく解説した内容になっています。
今月上旬発行のダ・ヴィンチには新刊案内を兼ねて、オードリーの若林氏と私の対談記事も掲載される予定です。
(C)キムラタカヒロ
書店で見かけた際には、手に取ってパラパラと内容をご覧いただければ幸いです。
末筆とはなりましたが、2016年が本ブログの読者の皆さま方にとって、良い年となることをお祈り申し上げます。
どうか、本年もよろしくお願い致します。
■老後資金作りの積立てに活用
NISA口座での積立は、若い世代だけに向いているわけではありません。そろそろリタイア後の生活が気になり始める50歳代にもお薦めします。
50歳代になると、子育てが一段落し、退職までの期間で老後資金を作りたいという人たちも多くなるでしょう。
積立投資なら、株価の水準や相場動向などにとらわれずに、手軽に始めることができるので、投資や運用の経験があまりない人に適した投資法といえます。
リタイア後の資金作りを行いたい人は、ある程度経済的な余裕ができたら、NISA口座での積立投資をとにかく早めにスタートしましょう。
というのも、運用期間が長ければ長いほど複利効果が高まるからです。
例えば、毎年100万円ずつ10年間投資し、年3%で運用した場合、単利運用(分配金等を受け取るケース)と複利運用(分配金等を再投資するケース)では、下図のとおり複利運用の方が最終的に15万円ほど資金が増えます。
「10年で15万円しか変わらないのか」と思われるかもしれませんが、投資元本が大きくなり、運用期間が長くなるほど差が拡大していくため、30年後には505万円もの差が生じます。
50歳代になってからの老後資金づくりが目的だと、毎月の投資金額が大きくなることもあって、20〜40歳の資産形成層の場合のようにハイリスクタイプの商品に投資する気になりにくい方も多いでしょう。
そんな場合には、分配金をできるだけ出さずに複利運用が行われるミドルリスクタイプの商品の活用を考えましょう。
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