今年から個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入対象者が大きく増え、20歳以上60歳未満のほとんどの人が加入可能となりました。

 

前回、金融庁さんを中心に日本人の金融リテラシー向上のためのプロジェクトが始動しそうだという話をさせて頂きましたが、「リテラシー」という言葉は「知識+実行力」を意味しています。

 

「長期・分散・積立」を基本とした投資の実行力を身につけてもらうための具体的な仕組みとして、国は来年から始まる予定の積立NISAと対象者を拡大したiDeCoを用意したということでしょう。

 

 

私なりに日本人の金融リテラシー向上に寄与できるようなことを、ということで323日に「女性のための個人型確定拠出年金の入り方」というマンガ本(詳しくはこちら)をKADOKAWAさんから出しました。

 

昨年出した「気づいたら貧困層!?」と同様に、マンガ家の小久ヒロさんとのコンビで作ったのですが、前回は教育・啓蒙関係の内容が中心だったのと比べて、今回は実務本として行動につなげるための内容を重視しました。

 

 

iDeCoの申込書の書き方や口座を開設する金融機関の選び方、具体的な商品の選び方まで書いてあり、これ1冊読めば、ほとんどの人はiDeCoをすぐに始められるはずです。

 

iDeCoに少しでも関心がある方には、是非読んでいただきたいと思っています。

 

マンガの一部は、今後りそな銀行さんや三菱UFJ信託銀行さんのホームページなどでも紹介される予定になっています。

 

 

また、この本の出版を記念してということではないのですが、サンケイリビング新聞社主催の、iDeCoセミナーで講師を務めました。

 

iDeCoという愛称の選定委員だった元プロ・テニスプレーヤーの杉山愛さんと一緒に京王プラザホテルで、女性中心に約200名の参加者に向けた講演をさせて頂きました。

 

iDeCoに関心がある方が来場していたためか、皆さん真剣にメモを取る姿が見られましたが、「今日はいい話を聞いた」で終わらずに、是非、投資の第一歩をiDeCoで踏み出してもらえたら、と思います。

 

iDeCoマンガ本_1.jpg

23日、金融庁は「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」を設置し、私は委員の一人になりました。

 

金融庁さん主催の会議には金融経済教育関連のものを中心に、これまでも何回か委員として関わって来ており、昨年も金融審議会市場ワーキング・グループ(WG)の委員としてフィデューシャリー・デューティーについての議論に参加しました。

 

そんなこともあってか、最近は金融庁さんのいろいろな部門からのお問い合わせやヒアリングが増えて来ていたのですが、今回の会議では、いよいよ生活者向けの金融経済教育が国のプロジェクトとして、本格的に始動しそうな気配を感じました。

 

 

23日の会議には、越智金融担当副大臣や森金融庁長官も出席され、日本の個人金融資産の過半を預貯金が占める現状の背景や「長期・積立・分散投資」を促進していくことで、有価証券投資の部分を増やし、そのポートフォリオをバランスのとれたものにしていくための方法、さらに実践的な投資教育や情報提供についての議論がスタートしました。

 

詳しい内容をお知りになりたい方向けには、金融庁のホームページで、いずれ議事録が公開される予定です。

 

 

独立系FPである私が、国家的なプロジェクトの方向性を議論することになるかもしれない会議に、たった6人しかいない委員の一人として参加していること自体が示しているような気もしますが、会議全体を通じて、金融経済教育だけでなく、投資型商品のアドバイスや販売の荷い手としての独立系FPへの期待の大きさが感じられました。

 

欧米スタイルの独立系FPのビジネスモデルの確立に向けて、追い風が吹き始めようとしているようです。気を引き締め、弊社のグループ・メンバーと共に、投資運用アドバイスを中心として、さらなるスキルアップを図って行きたいと思っています。

③リタイア層(60歳代〜)の活用法 〜その3 

 

贈与資金の受け皿として活用

 

 

■贈与と組み合わせて活用したい

 

20151月以降、相続税の基礎控除額(非課税枠)が以前の「5000万円+1000万円×相続人の数」から、「3000万円+600万円×相続人の数」に引き下げられました。

 

以前なら課税対象ではなかった人も、相続税を支払う可能性が出てきています。

 

そこで、生きているうちに子供や孫に少しずつ資産を贈与し、相続時の財産を減らしておこうと考える人も増えているようです。

 

NISAの活用法(7).bmp

NISA20歳以上で日本に居住していれば誰でも口座を開くことができ、19歳以下であってもジュニアNISAを利用できるようになったので、リタイア世代が子供や孫に贈与した資金を、それぞれのNISAやジュニアNISAの口座で運用するということが考えられます。

 

資金を贈る側、受取る側を合わせれば、あらゆる世代に考えられる活用法ともいえるでしょう。

 

一般的な贈与の場合、基礎控除(毎年110万円)の範囲内であれば贈与税がかかりません。

 

仮に、2人の子供に毎年100万円ずつを5年間贈与し、その資金がNISA口座で運用されていけば、合計で1000万円の資金を非課税で移転でき、運用益にも税金がかからずに済むわけです(ただし、実際に行う場合には、まとまった資金の贈与と認定されないように、毎年の贈与金額を少しずつ変更するなどの工夫が必要になるかもしれません)。

 

子供や孫の世代では、資産形成を目的とした積立て形式での長期運用が最も効果的と考えられ、この場合には複利効果を高めるためにも、できるだけ分配金を出さないタイプのファンドで、将来の成長が期待できる投資対象に投資を行うタイプのものが有力な候補になるでしょう。

 

 NISAの活用法(7)_2.bmp

③リタイア層(60歳代〜)の活用法 〜その2

 

インフレ等に備える「残す資金」の運用口座として活用

 

リタイア後の家計にとって、最大の敵は「インフレ」といえるでしょう。

 

現役世代ならば、物価の上昇に合わせて給料もある程度上がることが期待できるでしょうが、公的年金の支給額は増えにくい仕組みになっている上に、保有している資産の価値が物価の上昇と共に低下していくことになるからです。

 

NISAの活用法(6)_1.bmpそこで、将来のインフレへの対策として、特に使用する予定のない余裕資金(残す資金)の一部で、物価上昇時に価格が上昇する傾向のある金融商品をNISA口座で毎年120万円分ずつ購入し、将来のインフレに備える保険的な位置付けで保有し続けるという方法が考えられます。

 

長期的にはインフレ抵抗力があるといわれる代表的な金融商品に株式がありますが、個別銘柄の株式はどうしても値動きが大きくなりがちなこともあり、投資するのに躊躇してしまう人も少なくないでしょう。

 

 

インフレ対策としての運用の目的は、資産を大きく増やすことではなく、あくまでも保有資産の価値を保全することですから、リタイア世代やプレリタイア世代では、複数銘柄の株式をある程度組み入れたバランス型のファンドや、インフレ時の通貨価値の下落に備えられる外貨建ての債券やREITで運用されるファンドなどが有力な選択肢になるでしょう。

 

幸いにしてインフレが発生しなければ、もともと「残す資金」の一部のはずなので、そのまま次世代に継承してもらえばいいと思います。

 

 

なお、長期間の運用を行う場合には複利運用が効率的といえるため、できれば分配金を出さないタイプのファンドで、ロールオーバーしながら10年以上運用を継続すれば、インフレに対する保険としての効果をより期待できるでしょう。

 

NISAの活用法(6)_2.bmpのサムネール画像

③リタイア層(60歳代〜)の活用法

 

「ゆとり資金(受取りたい資金)」の個人年金商品での活用

 

毎月の生活費の不足分やお小遣いを貯蓄から取り崩している、という人も少なくないようです。

 

そんな人には、NISA口座で分配型のファンドを購入し、運用しながら毎月分配金を受取っていく、という活用法が考えられます。

 

NISA口座でファンドを購入すれば、本来受取る分配金にかかる20.315%の税金は一切かかりません。

 

特に定期的な分配金を個人年金代わりにしたいという、リタイア後の世代のニーズに対応する活用法といえるでしょう。

 

 

ご夫婦お2人で毎年120万円ずつ分配型のファンドを購入していけば、最大で投資元本1200万円分のファンドから、非課税で分配金を受取ることができるわけです。

 

例えば、NISA口座で分配型ファンドを120万円分購入し、毎月5000円の分配金(普通分配金のみ)を受取る場合、分配金がずっと変わらないとすれば、非課税期間の5年間の合計で、6万円強の税金を払わずに済みます。

 

お2人で5年間継続して毎年120万円分ずつ購入していけば、そのメリットは大きくなります。

 

 

ただし、注意したい点があります。

 

投資家が受取る分配金には、税金がかかる「普通分配金」と、税金がかからない「特別分配金」の2種類があります。

 

税金がかからない分配金とはどういうものでしょう。

 

 

投信は値動きのある商品で運用するため、投資対象の価格が下がり、信託財産(投資家から集めたお金)の評価額が小さくなっている(=基準価額が下がっている)ときに分配金を払い出すと、購入時の基準価額(個別元本)によっては、当初の投資資金の一部が払い戻されるということが起こります。

 

この部分が特別分配金、または元本払戻金と呼ばれるものです。

 

自分が出したお金が戻ってくるだけなので、収益とはみなされず、税金はかかりません。

 

 

そのため特別分配金には元々税金はかからず、非課税のメリットを活かすことができません。 

 

値動きの大きめな商品は、安定的に高額の普通分配金を払い出すことが難しいと考えられるため、毎月必要とする分配金の金額にもよりますが、一般的にはNISA口座で毎月分配型のファンドを購入する場合には、値動きが小さめの、普通分配金を中心に払い出すタイプのものを選ぶ方が無難といえるでしょう。

 

 

NISAの活用法(5).bmp 

 

プロフィール

神戸 孝 (かんべ たかし)
早稲田大学法学部卒業。三菱銀行、日興證券を経て、99年FPアソシエイツ&コンサルティングを設立。日興證券勤務時代を併せるとFP歴は約25年、資産運用に強いFPの第一人者として評価が高い。日本FP協会理事、金融庁金融経済教育懇談会委員、同金融審議会専門委員などを歴任する。

最新の著作

気づいたら貧困層

気づいたら貧困層
2016年01月発行
株式会社カドカワ
神戸 孝

2017年7月

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