2020年9月のアーカイブ

withコロナ時代の資産運用

前回、「仕事としての運用」は国際分散投資が基本であり、世界経済の成長が不可欠という話をしました。もしも、あなたが世界経済全体は将来に向けてシュリンクしていく、と考えるのであれば運用はやめるべきでしょう。

しかし、いずれはダメージを乗り越え、経済は再度成長していくはずだと考えるのであれば、ここで投資をやめるというのは間違いです。ただし、当面の間は成長が鈍化し、かつ市場のボラティリティが高い状況が続きそうです。こうした投資環境下では、どのように投資・運用を行っていけばいいのでしょうか。


◎ポートフォリオ構築中であれば投資の継続を

マーケットが大きく下落するような局面では、積立方式で投資を行い、ポートフォリオを構築しつつある人の中にも、売りたくなったり、積立をやめたくなったりする人が少なくないと思います。しかし、定額で行う積立投資は、価格が高い時には少ししか買えず、低い時にはたくさん買えるという、とても合理的な投資方法で、価格の変動幅が大きい投資対象ほど平均取得単価を引き下げる効果を期待できます。ひるまずに積立投資を継続すべきです。


◎ポートフォリオ構築済みであれば配分比率や商品の見直しを

すでにポートフォリオを構築済みで、ある程度まとまった金額で運用している人は、資産配分を見直すといいでしょう。今後しばらくは経済成長率の低迷が予想されること、また、過剰流動性相場の中、多くのマーケットでボラティリティが高めの時期が続く可能性が高いことなどを考慮し、ボラティリティが大きい株式の比率を下げることで、しばらくの間はポートフォリオ全体のリスクの低減を図るべきでしょう。

また、コロナ禍により観光や宿泊関連を筆頭に多くの業種がダメージを受けている一方で、リモートワークなど新たなワークスタイルの広がりにより、IT関連などを中心に、さらに成長が期待できそうな業種も出てきています。これまで高い成長率が期待できた新興国経済も、コロナ感染の状況や、米中関係の悪化による影響などが国により大きく異なるため、従来のようにひとくくりにして投資を行っていいのかを再考する必要が出てきています。インデックスファンドを中心にマーケット全体への投資を行ってきた人の場合、コロナ禍の影響を予測しながら、一部を有望な国や産業への投資へ切り替えることも必要でしょう。

 

◎これまで以上に資産運用が難しい時代に

コロナ禍の先行きはまだまだ不透明であり、米中関係の先行きなども含めて不確実性が高まれば高まるほど、ポートフォリオのリスクコントロールは難しくなります。さらに、アセットクラス間の相関関係が以前とは異なってきていることもリスクコントロールを難しくしています。現在は世界的な低金利下の過剰流動性相場で、投資可能な資金がジャブジャブの状態です。その資金が流れ込んだアセットクラスでは価格の上昇が発生していますが、逆に一斉に引き揚げられれば価格の大幅な下落につながるでしょう。以前異なる値動きを見せていたアセットクラスを組み合わせることだけでは、リスクのコントロール(ブレの抑制)が行いにくくなってきています。したがって、当面の対策としては、より多くの投資対象に分散投資を行う、あるいは、ポートフォリオのキャッシュ・ポジションをある程度高めに保つといった対応を考えるべきでしょう。

◎パンデミックによる株価暴落は未知のでき事

今年2月、北イタリアでの新型コロナウイルスの感染者急増をきっかけに、世界的に株価が暴落しました。今回の株価暴落は、私がこれまで経験した暴落とは全く性質が違うものといえるでしょう。従来の株価暴落というのは、リーマンショックなどもそうだったように、マーケットの中に何らかの原因があり、それによって引き起こされたものでした。

そうした暴落は、それなりに多くの人が経験してきたわけですが、今回のパンデミックによるこれほどの株価下落というのは誰も経験がありませんでした。コロナ問題の広がりや終息について先が読めないということもあり、驚きが恐怖に変わりながら暴落も世界中に広がっていきました。

経済を下支えしようと各国が行った大型の経済政策や金融緩和策により、株価は持ち直しつつありますが、これはかつてない規模の資金余剰状態を作り出し、その結果、行き場のないお金が債券と比べれば株式の方がまし、というような形で動いている状況といえるでしょう。コロナ禍自体はまだ全く終息のめどが立っていないわけで、いったん持ち直したとはいえ、マーケットの先行きが不透明な状況であることに変わりはありません。


◎個人の投資・運用への影響

こうしたマーケットの状況は、当然、個人の資産運用や投資にも影響を及ぼしますが、その影響は投資・運用のスタイルにより異なってきます。

以前もお話ししましたが、個人が行う投資や運用には、主に2つのスタイルが考えられます。一つのスタイルは、自分の相場観で、面白い、儲けたいと思って行う投資、いわば「趣味としての投資」。そしてもう一つのスタイルは、自分が頑張って働くのと同時に、ある程度はお金にも働いてもらいたいと思い行う、「仕事としての運用」です。

「趣味としての投資」を行っている人の中には、ボラティリティが高まった2月以降のマーケットの状況を、儲けるチャンスと捉えている人も少なくないでしょう。たとえ失敗して損を出しても、それを趣味にかかったコストとして支払っても仕方ないと考えられるのであれば、問題ないと思います。

一方、投資自体にはそれほど関心はないが、老後資金などへの不安もあり、お金にも働いてもらいたいという「仕事としての運用」を行っている人にとっては、今回のコロナ問題は迷惑以外の何物でもないはずです。

なぜなら、「仕事としての運用」の基本は長期国際分散投資であり、そのリターンの源泉は世界経済の成長だからです。ところが国際機関などの成長率予測を見ると、コロナショックにより今後しばらく、世界の経済成長は期待できないどころか、マイナスになることが予想されています。

そういった低成長時代にも「仕事としての運用」を継続すべきなのか、継続する場合には具体的にどう運用していけばいいか。これらの点については、次回お話ししたいと思います。