入門講座④:投機と投資(「勘・度胸・祈り」vs「理性・忍耐・科学」) その2 

(前回からの続き)  

 それでは損をしたくないという思いの方が強い人や「失うと困る資金」はどのように運用すればいいのでしょうか。投機的な行為の最大の問題点は、大きなリターンを狙っての「まとめ買い」にあります。まとめ買いするからこそ、一か八かで思惑とは異なった値動きになると大きなマイナスを被ってしまうわけです。私たちFPがお客様にお薦めするスタイルは「分散投資」が基本となっています。それは相談に来られるお客様のほとんどが、「儲けたいとは思うが、それよりも損をしたくないと思う気持ちのほうが強い一般的な生活者」だからです。分散投資を行うのは、前回お話しした「リスクのコントロール」を行うためです。リスクのコントロールに必要なのは「勘と度胸と祈り」とは対極ともいえる「理性と忍耐と科学」になります。

 

 私たちがお薦めする「長期国際分散投資」は、ある意味で面白味のない運用といえるでしょう。ある程度のメンテナンスは必要となりますが、基本的にはいろいろな商品を長く持っているだけで、求められるのは「理性と忍耐」なわけですから、値動きがあることでハラハラ・ドキドキしたいというような人や投資が趣味の人、株価や為替レートを1日に何回も確認するような人にとっては、退屈でつまらない運用スタイルに見えてもしかたないと思います。

 

 「資金運用」というのはお金を働かせることを意味します。働く、つまり仕事なわけで、給料に当たるリターンを得るためには面白いとばかりは言っていられないということだと思います。一方、趣味にはコストがかかるのが一般的です。趣味的な投資を行うのであれば、ある程度の出費(損失)は覚悟しておく必要があると思っておいた方がいいでしょう。

 

 さて、私たちはなぜ長期投資をお薦めするのでしょうか。一般的に、値動きのある商品の値段はさまざまな市場(マーケット)で決まります。マーケットには多くのプロ(証券会社や金融機関、機関投資家、投資信託などを運用するファンドマネージャーなど)が参加しています。短期間でリターンを得ようとすればするほど、プロに打ち勝たねばならなくなってしまいます。たとえば為替取引を行っている人の全員が短期的な利益を求めるデイトレーダーだったと仮定してみましょう。全員が儲けているということはありえませんよね、誰かが儲かったということは、誰か損している人がいるはずなのです。

 

 マーケットでの短期売買で、個人投資家がプロに勝つのはなかなか難しいでしょう。短期売買での勝敗を分ける要因といえるのが、情報量、情報の分析力、資金量、そして運といったものだからです。前の3つはプロの方が優位、ということになると個人投資家はどうしても「運頼み」となってしまいがちです。

 

 しかし、長期投資ならば個人投資家がプロに打ち勝つ、あるいはプロと共に勝者となることも難しくなくなります。なぜなら個人投資家には、ほとんどのプロが持っていない「時間」という武器があるからです。この武器を活かして、将来価値を増しそうなもの、時期はわからないがいつかは値上がりしそうなものに、余裕資金で前もって投資しておけばいいわけです。

 

 「投資」というのは「資(資産、財産、価値あるもの)に投げる」と書きます。つまり将来価値が上がりそうなものを捜すことが重要なのです。「今なら何が」ばかり考えているとどうしても投機的な行為につながりがちです。もう少し長い目で見て、「将来有望そうなものに自分の資金と時間を与える」というスタンスで投資対象を捜すことが、投資の本質だろうと思います。